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鮒田式胃壁固定具徹底解説

書籍「鮒田式胃壁固定具徹底解説」の「鮒田昌貴からのメッセージ」より

  本書は、経皮内視鏡的胃瘻造設術や経皮的胃壁腹壁固定法が主人公ではなく、「胃壁固定具」という本来、脇役であるはずの道具が主人公の書籍です。

  私は、今から約20年前に胃壁固定具を考案しました。苦労して誕生させたこの胃壁固定具は、まるでわが子のように愛しい製品です。だからといって本書はその記念や記録のために出版したのではありません。

  胃壁固定具を考案し市販化された日から、私はこの道具について自ら語ることをやめました。
  これから胃壁固定具は医療の現場で多くの先生方に利用していただき、そのことを通じたくさんの患者に恩恵をもたらすことができる、そう確信していました。

  さらに、そこから得られるであろう膨大な知見については、研究を続ける先生方から発表がなされ医療に生かされるはずだと。
  経皮内視鏡的胃瘻造設術は、まさに大きく発展・普及しようとしている時期でもありました。

  私は私に与えていただいた大きな役割を終えた安堵感とともに、それから日常診療に没頭する毎日が続きました。

  その後は経皮内視鏡的胃瘻造設術が日本の医療の中でどのように発展してゆき、その中で胃壁固定具はどのように生かされてきたのかを、数多くの先生方の学術論文を通して拝見してまいりました。その中にはまだ、経皮内視鏡的胃瘻造設術の普及前からご尽力されていた、お懐かしい先生方のお名前を拝見することもありました。

  経皮内視鏡的胃瘻造設術は、多くの先生方のご尽力により、ひとつの大きな段階を終えたといえるのではないでしょうか。

  そして現在、経皮内視鏡的胃瘻造設術は、構築の段階を終え、次の段階に入りました。それはひとことで言えば再構築の段階と言えるでしょう。新たな術式や工夫が研究され、その過程で新たな道具の開発や改良も行われています。

  こうした喜ばしい流れの中で、ひとつの懸念が生じております。それは道具が主役になってはならないということです。胃壁固定具は確かに私にとっては特別の思い入れのある道具です。しかし、医療の現場で生かされる時には、そうした思いはまったく無用のものであるばかりか、多くの弊害をもたらすものに他なりません。

  例えば企業の論理も同じです。私はメーカーに胃壁固定具の製造・販売を許諾するときに、ひとつの重要な条件を付託しました。
  それは単品販売の堅持です。どのようなことがあっても、あらゆる企業の胃瘻造設キットと併用できるようにしました。たとえそのメーカーの胃瘻造設キットと競合するような製品との併用であっても、それを妨げるようなことがあってはいけません。メーカーはこの約束の主旨をよく理解し、それを今も守り続けてくれています。

  道具はあくまでも道具であり、さらに言えばそれは医師のための道具ではなく、患者のための道具でなくてはなりません。

  道具は術式にとって手段であり、さらに術式は治療にとって手段です。目的はあくまでも患者の利益ではないでしょうか。患者の利益につながらない術式や道具には存在意義はありません。

  しかし、私を含めてこの大切なことを見失うことがあります。だからいつもこのことを忘れないように、心に刻まなくてはならないと思っています。

  本書ではタイトルの通り、鮒田式胃壁固定具に関しての情報を公開したいと思います。考案の経緯、開発のプロセス、市販化、現状の課題、そして未来。これらが経皮内視鏡的胃瘻造設術と胃壁腹壁固定法を実施する方々の臨床に生かせる情報となれば幸いです。

  また、これから道具を考案したいと考えている方には、本書を通して大きなヒントをご提供できると確信しています。

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